大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)2540号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

「そして婚姻破綻の直接の原因は、控訴人が当時まだ十代前半の精神的に傷つきやすい幸子に対し、家長の地位からその存在を無視してかかるといつた人間的なやさしさを欠いた行動に終始したことにあると認められるが、一方、被控訴人が、幸子を手もとに引取るについて控訴人に事前に十分事情を説明して諒承を得る順序をふまず、却つて結婚前は幸子のことを伏せておき、結婚したのちになつて、是非とも同人を引取らざるを得ないとして控訴人にその承諾を求め、しかもそのことに釈然としない控訴人の心情を理解しようとせずこれを氷解させるような努力をしなかつた被控訴人の態度にも、婚姻破綻の一半の原因があるといわなければならない。

以上説示したところによれば、被控訴人の本件離婚の請求は理由があるというべきである。」

(被控訴人及び控訴人の各慰藉料の請求について)

被控訴人と控訴人が離婚せざるを得ない状況に立ち至つたこと、その責を当事者の一方のみに帰することができないことは、前述のとおりである。換言すれば、被控訴人が、はじめ控訴人に中尾幸子のことを打明けないでいたことは、その理由は何れにせよ、被控訴人と結婚生活をはじめようとする控訴人にとつて納得し難い性質の事柄であり、しかも被控訴人には、その控訴人の心情を氷解させる努力に欠けるところがあつたのであり、一方、控訴人が幸子に対してとつた前述の言動、態度は、事が何ら幸子に責任のないものであること、幸子が少女であることを考えると、思いやりのない大人気ないものであつたといわざるを得ず、こうした状況を見て、被控訴人の心が控訴人から離れていつたことも、無理からぬものがあるというべきである。そして、その他本件に顕われた諸事情を総合して考察すれば、婚姻破綻の責は、被控訴人及び控訴人の双方にあり、そのいずれが大きいとも言い難く、かつ離婚の余儀なきに至つてそれぞれの蒙つた精神的苦痛は、相手方の心情を踏みにじつて省みない自己の行為に対する相手方の反応という相互作用によつて生じているものと認められるから、双方とも自らの非をさしおいて相手方の非をならしこれを不法行為として糾弾することはできないものといわざるを得ない。

従つて、被控訴人及び控訴人の各慰藉料の請求は、いずれも理由がないというべきである。

(杉田洋一 蓑田速夫 松岡登)

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